シトルリン研究会を主催する協和発酵バイオ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:石野 修一)は所沢ハートセンター(本社:埼玉県所沢市、院長:桜田 真弓)との共同研究で、シトルリンの摂取が狭心症患者の血中LOX-1※1結合酸化LDL濃度を低下させ、血管内皮機能※2を改善することを明らかとし、国際学術誌Immunology, Endocrine & Metabolic Agents in Medicinal Chemistry誌に発表しました。これまでシトルリンが血管を拡張し、血流を促進することは知られていましたが、狭心症などの血管の痙攣の一因となる血管内皮機能不全に対する効果については初めての知見であり、シトルリンの臨床面での可能性を示唆する成果と考えられます。
シトルリンはスイカに多く含まれる成分であり、我々の体内にも存在するアミノ酸の一種です。国内では食品としてサプリメントや飲料に幅広く使用されています。
シトルリンを摂取すると血管での一酸化窒素(NO)産生が促進することが知られていますが、NOには血管を拡張し血流を促進する作用があり、冷えやむくみの予防、更には動脈硬化の抑制効果があることが明らかとなっています。またスポーツ時においては、血流促進を介したパフォーマンス向上効果が報告されています。しかしながらシトルリンの摂取が、ヒトにおいて血管の内皮機能不全を回復することや、血中の酸化LDLに及ぼす影響については、詳しいことは判っていませんでした。
協和発酵バイオ(株)と所沢ハートセンターは、冠攣(れん)縮性狭心症※3の患者(41-64歳の男女22人)を対象に、シトルリンを1日当たり800mg、8週間摂取させ、血管内皮機能の指標である血流依存性血管拡張反応(FMD)※4や、内因性NO合成酵素阻害物質のasymmetric dimethylarginine (ADMA)※5をシトルリンの摂取前後で評価しました。合わせて血中アミノ酸、過酸化脂質、NO濃度等についても測定しました。
その結果、シトルリン摂取4週目からFMDの有意な改善が認められ、摂取終了後4週間経った時点でも効果の継続が認められました。またシトルリン摂取によりADMAの有意な低減と血中NO濃度の上昇傾向が認められ、これらの結果からシトルリンの経口摂取が、狭心症に伴う血管内皮機能不全を改善する効果が明らかとなりました。また今回の研究では、血中のLOX-1結合酸化LDLの低減も認められました。LOX-1は血管内皮に発現する酸化LDL受容体であり、LOX-1に結合活性をもつ酸化LDLは血栓性血管疾患の原因となります。シトルリンは血管への酸化ストレス低減作用を介して、血管の機能不全を抑制している可能性が示唆されます。
発表者である協和発酵バイオ(株)ヘルスケア商品開発センターの森田匡彦研究員は「シトルリンの血管保護作用はこれまで動物実験レベルで一部明らかとなっていたが、今回、ヒトでの有効性が確認された。血管内皮機能の改善に加え、酸化LDLをはじめとした血管障害因子の低減作用などメカニズムも併せて明らかにした点で価値がある。」とコメントしており、また共同研究者である所沢ハートセンターの桜田真己院長は「今回の成果から、シトルリンは動脈硬化性疾患をはじめとした循環不全が原因となっている疾患にも有効である可能性が見いだされた。日常的にシトルリンを摂ることで循環器疾患の予防に寄与できる可能性がある」とコメントしています。
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