研究会:麹町にある「ダイヤモンド囲碁サロン」におじゃましました。すわり心地のいい椅子、壁にかかった絵、素敵な空間ですね。昔の「碁会所」のイメージとずいぶん違います。
桝:最近はインターネットで碁を打つ方も多いのですが、人と相対して打つ碁の良さを、若い方に知っていただきたいという思いでやっています。バーカウンターもあって、対局の後、ゆっくりお酒を飲みながらコミュニケーションをとっていただくこともできます。
研究会:もしかしたら私が知らないだけかもしれませんが、囲碁をされる方はまわりにあまりいないようです。現在囲碁人口ってどれくらいなんですか?
桝:2011年のレジャー白書によれば610万人ほどだそうです。将棋に比べれば少ないですが、それでも意外なほど多いですね。
研究会:囲碁というとおじいちゃんの趣味というイメージですが、実際もそうですか。
桝:たしかに碁会所に集う方は年配の男性が圧倒的に多く、若い方が少ないですね。それでいて、子供の囲碁人口は実はかなり多いんです。「ヒカルの碁」のような囲碁漫画の影響もあると思います。また子どものための囲碁教室なども各地にあります。ところがその間の、若い世代の囲碁人口がぽっかりと空いているんです。30代女性になると全体の1%しかいません。そういう状況に危機感を覚えて立ち上げたのが私たちの「イゴアミーゴ」というグループなんです。
研究会:どういう団体なのでしょうか。
桝:もともと梅沢由香里(現在は吉原由香里)プロが中心になって作ったボランティア団体なんですが、まずは囲碁を打つ場所と環境を提供して若い世代の仲間を増やそうと始まりました。2006年に「IGO AMIGO」という名前に変えてワークショップなどを開催するようになりました。2007年からは年に一度の「IGO FESTIVAL」というスペシャルイベントも開催しています。このイベントは今年で6回目になりました。
研究会:ボランティア団体というと、桝さんもほかに本業のお仕事をお持ちなわけですね。
桝:もともと私は建設会社のOLだったのですが、囲碁好きが高じて現在はこの「ダイヤモンド囲碁サロン」に転職しました。ここで働きながら、ボランティアでイゴアミーゴの運営やフリーペーパー「碁的」の編集をしています。
研究会:イゴアミーゴが制作している囲碁マガジン「碁的」を見せていただきました。これは無料のフリーペーパーということですが、女性ファッション誌のようにおしゃれで驚きました。
桝:ありがとうございます。年に1回出しているのですが、今年で5年目になります。最初の年は恐る恐る1万部ほど刷って、多すぎるかなと思ったのですが、幸いご好評をいただいて、現在は5万部刷っています。
研究会:このような雑誌を出されたきっかけは?
桝:08年の「囲碁フェスティバル」に合わせて広報紙を出そうということになったのですが単なるパンフレットではなく、トレンドリーダーの若い女性にターゲットを絞って、思い切ってファッション誌みたいな作りでやりたい、とこだわってみました。
研究会:囲碁の話題だけでなく芸能人のインタビュー、料理ページなど内容も多彩ですね。
桝:おかげさまで多くのメディアに取り上げていただいて、囲碁に関心を持つ若い方が増えました。
研究会:どういうところに置いてあるんですか?
桝:今のところ囲碁の関連施設、ゆうちょ銀行、ケーブルテレビのJ:COMショップなどに置かせてもらっています。あとは配送依頼があればお送りしています。ただし個人ではなく団体に限らせていただいています。駅などにも置いたら、とよく言われるのですが、まだまだ難しいですね。
研究会:編集部は何人ぐらい?
桝:全部で4~5人ですが全員、他に本業を持ちながらボランティアでやっています。
研究会:ところで桝さんは、いつ碁を始めたのですか?
桝:始めたのは4~5歳の時です。囲碁好きの祖母に手ほどきを受けました。10人いた孫のうち、碁に興味を示したのが私一人だったので、祖母が喜んで熱心に教えてくれました。「将来はプロに」なんて祖母は思ったらしいのですが、躊躇したそうです。
研究会:囲碁のプロを目指す子はたくさんいるんですか?
桝:はい。2010年には11才の女の子が最年少で日本棋院の棋士採用試験に合格し、プロになりました。プロを目指すような子は、どんなに遅くても7~8才頃から本格的に始めないと難しいようですね。
研究会:年齢制限はあるんですか?
桝:23歳までに試験に合格しないといけません。ですからプロを目指すなら中学や高校生ぐらいの年にはひたすら碁の勉強に励んでいて、普通の子のようにのんびりと学生生活を楽しむ余裕は無いと聞きました。
研究会:囲碁をやっている子はみんな頭が良さそうに見えますが、囲碁は脳の発達にも影響があるのではないでしょうか。
桝:私自身は特別に勉強ができたわけでもありませんでした(笑)。ただ奇抜なことを考えたり、アイデアを出す力は囲碁によって培われたのではないかと思います。
研究会:発想が豊かになる?
桝:囲碁というゲームは決まった型を覚えればいいというものではないんです。自分自身であれこれ考える「創造力」が要求されるんですね。ですから自分で「考える力」、そしてそれを持続する「集中力」はおのずと身に付くと思いますね。
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