研究会:囲碁を打っているときとか、囲碁の手を考えている時、頭にはどんなふうに浮かんでいるんですか? 盤面が映像のように見えるんですか?
桝:私の場合はグラフィック的というか映像ですね。聞くところでは将棋の人と囲碁の人では見え方が違うそうですよ。
研究会:負けたときなんか、帰ってから囲碁の盤面が頭に浮かんだりしませんか? 寝る前に目をつぶったら碁盤が浮かんでくるとか。
桝:私は負けて悔しい時、夢の中にまで盤面が映像で出てきます(笑)。
研究会:打つときは次に相手がどう出るか、ある程度先を考えながら打つわけですね。そういう時は盤面にそのイメージを見ているのでしょうか。それともどちらかといえば論理的に考えるのでしょうか。
桝:プロの世界では、1回打った後の展開を100手先まで読む、とまで言われます。そういうときは計算よりイメージで見ているのではないでしょうか?
研究会:100手先ですか! でも相手がヘタクソだったらとんでもない手を打ってくることもありますよね。予想外の手を次々に打ってくる場合、100手先を読むなんて可能なんでしょうか?
桝:もちろん相手が同レベルであると仮定しての話です。碁には「正解」がないので自由に打っていいと言いましたが、ある程度の「相場」とか「法則」はあります。こういう場にこの相手はこう打ってくるだろう、というデータが頭の中に入っていて、それに基づいて考えているから先が読めるんですね。
研究会:知識や経験の裏付けがあってのイメージなんですね。
桝:囲碁はオセロや将棋などと比べて、創造性や直観が要求されるゲームといわれます。それで、碁を打つ時には右脳(感性に関わる部分)がよく使われているそうです。ところが脳の活動を調べると、プロ棋士の場合は、アマチュアとはちょっと違う脳の使い方をしているらしいのです。
研究会:プロは感性ではなく論理的に考えているということでしょうか。
桝:プロの場合、圧倒的に多くの定石や経験を記憶として蓄積しているので、そういうデータを瞬時に引き出して考えているのかもしれません。また一局の中でも、序盤、中盤、終盤で脳の活動する部位も違うとか。
研究会:囲碁を打っている時の脳の働きを調べるとおもしろいことがいろいろ出てきそうですね。
桝:碁を打つことで脳の血流が良くなり、脳の働きが活発になるので認知症予防にもいいのではないかとも言われています。また指先を使い、人とお話をしたりして交流するので、それも老化防止に良いそうですね。
研究会:碁が脳を駆使するゲームであることはよくわかりましたが、対戦の後は体力的にもかなり疲れるのでしょうね。
桝:はい、疲れます。真剣に1局打つとへとへとになります。脳だけでエクササイズやったみたいです。私は一日に4~5局打って熱が出たこともあります(笑)。
研究会:頭だけ働かせているようでも体力を使っているんですね。
桝:プロ棋士の方ですが、1局終わると2㎏減るということを聞いたことがあります。こうなるとスポーツと変わらないですね。脳の血流が活発になるとカロリーをたくさん消費して太りにくいかもしれませんね。
研究会:そういえば囲碁をやっている人に太っている人は少ないような気がしませんかか?
桝:そう言われてみると、ほっそりしている人が多いような気がしますね。体格のいい方はいらっしゃいますが、メタボ体型の方は少ないかもしれません。それと、プロ棋士の女性にはきれいな方が多いんですよ。
研究会:美人が多いのも脳の活性化と関係があるかもしれませんね。
桝:脳から若返るというのもあるでしょうね。あと、これは私見ですが、まだまだ男性が多い世界ですから、その中に女性が入るとやっぱり大事にされます。大事にされるとやはりうれしいので、身だしなみにも気を使っておしゃれするようになるし、いきいきして血行が良くなればお肌もきれいになったり、ということはあるかもしれません。
研究会:血行といえば、イベントで血管年齢のテストをされたそうですが、囲碁愛好者の血管年齢はいかがでしたか?
桝:私は最悪でした。碁に対する熱心さが足りなかったのでしょう(笑)。言い訳させてもらうと、ちょうどそのとき「碁的」の編集が締切間近で、ほとんど寝てない状態だったので・・・。でも中には実年齢よりマイナス10才という女性もいらっしゃいました。非常にきれいな方でした。
研究会:囲碁をやっているから血管が若いというよりも、生活習慣を改善して、血管が柔らかく若くなっていけば脳への血流がよくなってその結果、囲碁も強くなるかもしれない、ということは言えるかもしれません。
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