心臓病かもしれない、その兆候

心臓病かもしれない、その兆候

研究会:とても若い人が運動中に心臓麻痺で突然死するケースがありますが、早い段階で心臓病だと気づいていれば、防げたのでしょうか?

若い人に心臓麻痺が増えている

桜田:心臓疾患による突然死は「心臓麻痺」という診断で済まされることも多いのですが心臓麻痺の原因は様々で、心筋梗塞や狭心症からの不整脈発作の場合があります。動脈硬化からくる心筋梗塞の場合は症状の軽いうちにきちんと調べておけば防げた可能性が高いですが、心筋梗塞の半数以上は血管の狭窄度が軽度な状態から突然に発症し、若い人に多い傾向があります。数日前から予兆があることが多いのですが、最近まで心筋梗塞は年配の方の病気と考えられていたので、見逃されていたケースもあると思います。

研究会:早めに心臓病に気づく方法は?

桜田:実は症状の軽いうちは自覚症状もなくて、なかなか気づけないものです。自覚症状があらわれたときはかなり病気がすすんでいる可能性が高い。

研究会:自分で気づく初期症状にはどんなものがありますか?

桜田:歩き始めに息切れがするとか、胸が何となく重苦しい、圧迫感があるが数分間で消失するというのが多いですね。しかしこういう典型的な症状がない場合もあります。私の患者さんで、気づいたきっかけは友達と出かけたバス旅行だったという方がいました。バスを降りてみんなで歩いている時ふと気がつくと同年代の人たちと同じペースで歩けず自分だけがなぜか遅れている。足腰は丈夫なはずなのに息が切れて、ということで気づかれたケースもありました。自分一人のときは、苦しくならないように歩く速さを知らず知らずのうちに調整していたのですね。

発作を起こしても「異常なし」と言われ続ける人

発作を起こしても「異常なし」と言われ続ける人

研究会:その逆に、激しい胸の痛みを訴えて受診しても病院で異常なしと言われ続けている人がいます。本人がどんなに苦しいと訴えても心電図では異常なし、何軒も病院を変えた挙句、精神科に回されて、うつ病の薬を処方されるという話を聞いたことがあります。

桜田:そういうケースは少なくありません。胸が苦しくて救急病院を受診しても心電図では異常ないから心配ないといって帰されてしまうのですね。発作が何度もあって、いろんな病院を回っても大丈夫だと言われるのですが、でも本人は、「こんなに苦しいのに、なんでわかってもらえないのだろう」とそれがつらい、と。当院に来られてじっくり調べてみると動脈硬化の少ない血管の痙攣するタイプの狭心症でした。

研究会:心臓病の進行は見つけにくいのですか?

桜田:一見、若くて運動もしていて健康そうに見えてたら、一般病院で心臓病を疑うことは少ないでしょうね。また心電図をとったとしても、そのとき発作が治まっていればそれだけでは診断ができません。また心電図に出ないほどの弱い発作もあります。しかしいくら弱くてもそれが継続して起こっていれば非常に苦しいものです。動脈硬化で血管が細くなっている場合には、外来で行うマルチスライスCTという検査で見つけることが出来ますが、発作性に血管が痙攣するタイプの狭心症は、カテーテル検査できちんと誘発試験まで行う施設でないと確定診断ができないため循環器医でも診断しにくいのです。薬を処方しても一種類の薬では発作を完全に抑えられない場合があるので厄介です。 「こんな若い人が狭心症になるわけがない」という先入観が医師の方にあると、それ以上の詳しい心臓の検査はなかなかしないでしょうね。

症状の訴え方 病院の探し方

研究会:そうすると、患者の側が医師に上手に訴える技術も必要ですね?

症状の訴え方 病院の探し方

桜田:ふだんからメモをとって整理しておくといいですね。発作が何時に起こって、どれくらいの時間続いて、どのように痛いのか、どんな状況であったのか、何を食べているか、どんな薬を飲んでいるか、ほかに病気はないかなど、なるべく具体的に、どんなことでもいいので細かくメモしておくのもいい方法です。ただ苦しい、痛いと言われるよりも正しい診断にたどり着く時間が短縮されます。

研究会:何科に行けばいいんでしょうか。

桜田:心臓や血管の病気が疑われる場合は循環器科です。

研究会:運動はしたほうがいいのでしょうか。

桜田:「適度な運動」ですね。あまり激しい運動は酸化ストレスがたまってかえってよくないのです。人とおしゃべりしながらできる程度の速さで歩き、途中で小走りするとか、ゴルフの打ちっぱなしに行くとか、ね。可能なら食後に行うと血糖の上昇が抑えられてより効果的です。温泉などで体をじっくり温めると精神的なストレスもとれるだけでなく、血管の内皮機能も改善すると学会でも報告されています。

研究会:心臓病になりやすいタイプってありますか? 性格的なこととか。

桜田:几帳面で神経質なタイプがなりやすいという説もありますがどうでしょうか(笑)。精神的なストレスは血管の機能を低下させますので、おおらかな気持ちでいた方が体に良いのは確かでしょうね。逆に無頓着で気にしないタイプの人が食べ放題、飲み放題の生活をしていればリスクは高くなりますからね。

研究会:先天的な要素というのはありますか。

桜田:心臓病の場合は遺伝的要因もありますが、ほとんどは後天的要素、つまり生活習慣に大きく左右される病気なのですよ。まさに生活習慣が引き起こす病です。

研究会:先ほどサプリメントのお話が出ましたが、いろいろなサプリが世の中に出ているので、あれもこれもとどれを選んでいいのか迷います。

桜田:血流を改善することは体全体の健康を保つうえで基本的なことです。血流を通して酸素や栄養を体の隅々に届ける機能を持ったサプリメントは、心臓疾患に限らず、冷え性とか早期老化の予防などいろいろな良い面があると思います。サプリメントは副作用がなく、効果が確実にある事が重要です。血圧の薬だと中止すると翌日には血圧が上がってしまい、飲まなきゃ駄目だと自覚できるのですが、サプリメントは体質を改善するので、1週間程度服用しなくても直ぐに自覚症状が出ないため、中止しても大丈夫と錯覚してしまいがちです。体に不調を感じない状態というのがベストなので、とくに具合の悪いところがなくても、続けてみたらいいのではないでしょうか。すぐにどうこうというよりも、5年、10年のスパンで見ると差が出てくるのではないかと思います。

研究会:今日は貴重なお話を聞かせていただいてありがとうございました。

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