研究会:筋力トレーニングもされるのですか?
鈴木:もちろんします。筋トレは水中で怪我をしないためにも大事なことなんです。
研究会:水中の競技であるシンクロナイズドスイミングでの怪我って、ちょっと想像がつかないんですが。
鈴木:シンクロも怪我は多いんですよ。水中でチームメイトと足がぶつかっただけでも骨折します。競技では人と人の距離が近ければ近いほど加点されるのですが、近くなれば水中で足を掻くスペースが狭くなるので、ぶつかる危険が増します。ちょっとした拍子に誰かの足と絡まって指を骨折することもあります。また思い切り関節を開いて大きく動かす動きも多いので肉離れも起こします。
研究会:骨折しにくいようにカルシウムを取るというようなことを意識していましたか?
鈴木:当時は栄養士さんに食事の指導も受けていました。自己流でやっても偏りがちになるので。こういうものをこういう風に取りなさいという指導をしていただいていました。バランスよく食べるように言われていましたがとくにカルシウムとかそういうことは意識していませんでした。
研究会:シンクロ選手は見た目にはとてもスマートですが、浮力を増すために太らなければならないと聞きました。
鈴木:みんながみんなそういうわけではないんですけどね。それぞれにベスト体重というのがあって、それを維持するために選手のほとんどが、かなり食べていましたね。
研究会:鈴木さんの身長168㎝ですが、現役時代のベスト体重は?
鈴木:57㎏でした。
研究会:その体重にするためには相当食べるのですか?
鈴木:というより、それを維持するのが大変なんです。トレーニングしていると一日で2㎏ぐらい体重が落ちることもあります。それだけ短時間に体重が変化すると水中での浮力とか抵抗感が全然違ってくるんですね。だからベスト体重を維持するためにしょっちゅう食べているという感じですね。もちろん個人差があり、そんな必要のない人もいれば、逆に体重を減らさなければならない人も中にはいます。
研究会:食べてもなかなか太れない人はつらいですね。
鈴木:当時は食べることは楽しみというより、トレーニングの一環という感覚でしたね。
研究会:その頃、一日のカロリーはどれくらい?
鈴木:当時はカロリーを気にしたことはありませんでした。ただ私の個人的感覚で言えば、「カロリー」よりも「重さ」重視でしたね。
研究会:「カロリー」でなく「重さ」とは?
鈴木:たとえばケーキとお餅を比べると生クリームをたっぷり使ったケーキのほうがカロリーは高いのですが、お餅のほうが「重い」感じですね。もちろんカロリーの高いケーキを食べ続ければいつかは太るのですが、それよりもすぐに「体の重さ」に反映されるのがお餅とかおにぎりとかですね。そして炭水化物は食べたらすぐパワーになりますしね。
研究会:試合の前とか、ここぞというときに食べるのはどんな物でした?
鈴木:やはりおにぎりでしたね。海外遠征のときも、サンドイッチではなくおにぎり。とくに試合前とかは食事内容を変えないで、いつも食べ慣れているものが安心でした。
研究会:海外のアスリートは食物やサプリメントをかなり研究していると聞きますが、サプリメントは飲んでいましたか?
鈴木:薬に対してはやはりドーピングの問題が怖いので私たちは非常に慎重になりますね。何も飲んでいなくても何が出るかわかりませんからね。ビタミン剤であっても神経質になっていました。メダルが確定してもドーピング検査の結果が出る24時間後までは安心できませんでした。
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