NOのメリット

最も重要なNOの生理作用は、やはり心血管・循環器系の疾患から身体を守ってくれる保護作用と言えます。

NO(一酸化窒素)といえば、自動車の排気ガスなどに含まれ、スモッグや酸性雨といった大気汚染を引き起こす原因物質のひとつとして以前から知られてきました。ところが、実はこのNOが、人間の体内では血管を拡張させて、血流を調整する手助けまでしていることが今では明らかになっています。画期的な研究を成し遂げたのは、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部薬理学教授のルイス・J・イグナロ博士。1998年ノーベル医学・生理学賞の受賞者です。世界的に有名な治療薬バイアグラも博士の研究を元に開発されたものですが、NOが持つさまざまな可能性のほんの一例を示したに過ぎません。先日その博士が来日し、シトルリン研究会がインタビューを行いました。いかにNOが人間の体にとって有益な効果を持っているのか。NOの研究を始めたきっかけから、体内におけるNO産生をサポートするシトルリンの摂取方法まで、博士は熱く語っています。若き日、UCLA薬理学気鋭の研究室を主宰されておられたイグナロ博士のもとで学んだ林 登志雄先生(名古屋大学医学部附属病院老年内科講師)にお話を聞いていただきました。

ルイス・J・イグナロ博士

ルイス・J・イグナロ博士(Louis J Ignarro)プロフィール

1941年ニューヨーク生まれ、1962年コロンビア大学で薬学修士取得、1966年ミネソタ大学で薬理学博士号取得、1966年~1968年NIH(米国国立衛生研究所)研究員、1968年~1972年チバガイギー社(医薬品会社)主任研究員、1973年米国チューレン医科大学薬理学講座助手、1976年米国チューレン医科大学准教授、1979年米国チューレン医科大学教授、1985年カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部薬理学教授。1980年代初頭から、亜硝酸化合物からNO(一酸化窒素)に至るまで、各種窒素化合物の血管への作用に注目して研究。内皮から分泌される血管弛緩物質(血管内皮由来弛緩物質、EDRF)がNOであることを証明されました。この研究で1994年ラッセルUCLA賞、1995年チバ高血圧研究奨励賞の各賞に加え、1998年ノーベル医学・生理学賞を受賞されておられます。また世界各国の研究室との共同研究を積極的に進め、高血圧症、動脈硬化症に対するNOの役割を明らかにするとともに、NO合成酵素の基質である酸素及びアルギニンの代謝も研究。血管内分泌の概念を提唱、定着させました。国際NO学会理事長及び学会誌「NO」のEditor in Chiefとして、NO研究の発展にも大きく寄与されています。


林 登志雄

林登志雄先生プロフィール

1984年信州大学医学部医学科卒業、1990年名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了、1991~1992年博士研究員 (UCLA 医学部薬理学)、1992~1998年 名古屋大学医学部附属病院老年科医員、1998~2002年名古屋大学医学部附属病院老年科助手、2002~名古屋大学医学部附属病院老年内科講師。2009年日本NO学会学術集会副会長。老年病、総合内科、糖尿病、循環器各学会認定専門医。今回お招きしたイグナロ博士はUCLA留学時代の恩師であり、長年、共同研究のみならず公私にわたる交流を続けられています。


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