心臓病と血管の密接なつながり

心臓病と血管の密接なつながり

自覚症状では見つけにくい

シトルリン研究会(以下研究会):若い人に心臓病が増えていると聞きました。具体的にはどんな病気なのでしょうか。

若い人に心臓病が増えている

桜田先生(以下敬称略):①狭心症②心筋梗塞③心不全の3つが代表的なものです。このうち、狭心症と心筋梗塞は、心臓の血管である冠動脈が狭くなって起こります。また心不全というのは心臓のポンプとしての機能が低下する病気で、心臓弁膜症などいろいろな原因でも起こりますが、急性心不全の場合は狭心症・心筋梗塞と高血圧が主な原因です。

研究会:ということは心臓病は血管の障害から始まるのですね。「狭心症」と「心筋梗塞」の違いはなんですか?

桜田:心臓は、一日に10万回も休みなく動いて体中に血液を送り出しています。そのためには、心臓の筋肉自体にも血液によって栄養が供給されなければいけません。エンジンにガソリンが必要であるのと同じですね。心臓の筋肉に栄養を運ぶ血管が「冠動脈」で、その血管が細くなって十分な血液が流れなくなり本来の働きができなくなるのが「狭心症」。血流が極端に低下してしまうと、心臓の筋肉は血流不足の部分は壊死してしまいます。それが「心筋梗塞」です。ですから狭心症は心筋梗塞や心不全の前段階ともいえます。

研究会:どんな症状があるのでしょうか。

桜田:狭心症は、主に胸の圧迫感や締め付けられるような痛みとか、動悸を訴える方が多いのですが、それ以外に「歯が痛い、歯が浮く」とか「首のあたりが痛い」とか「肩」「みぞおち」「背中」など様々な部分に違和感を感じるケースもあります。またほとんど自覚症状のない場合もあり、ひどい発作を起こすまで気づかない方も多いのです。

心臓病は血管病?

研究会:心臓と血管に密接な関係があるということですが、そもそも血管のしくみとはどうなっているのでしょうか。

心臓の構造

桜田:血管は動脈も静脈も、内膜・中膜・外膜という3つの層からできています。一番内側が内膜です。さらにその内側に内皮というのがあります。血液に直接触れるところですね。この内皮は血管の健康を保つうえで非常に重要な役割を持っていて、体の状態に応じて、血管の中に様々な物質を放出して調節する機能を持っているのです。

研究会:血管の司令塔みたいな部分ですね。ホルモンのようなものを放出するのですか?

桜田:NO(一酸化窒素)もそのひとつですね。たとえば、内皮細胞からNOが放出されることで、血管を拡張させて血流がスムーズに流れるようになります。

研究会:NOが血流を良くするというのはよく聞きますが、本来、血管自身が出しているものなのですね。それを自分で調節するなんて、内皮機能って高性能なのですね。

桜田:血管の老化は、まずこの内皮機能がうまく働かなくなることから始まると考えられています。それを内皮機能障害といいます。

研究会:内皮機能が悪くなる原因は何なのでしょうか。

桜田:一般的に喫煙や悪玉コレステロールによる活性酸素の増加、高血圧などによる血管壁へのストレスが原因と言われています。生活習慣病と密接な関係があります。心臓病も、元をたどれば生活習慣が主な原因となっているのです。

心臓病は中高年だけの病気ではない

研究会:たしかに心臓病はメタボ体型の中高年の病気という印象があります。

心臓病にかかる人の変化

桜田:しかし最近は、そうとばかりは言えないんですよ。昔は40歳代で狭心症になる人はめったにいなかったのですが、今は30代でもかなり進んだ狭心症の方が増えています。

研究会:最近っていつごろからですか。

桜田:ここ10年ですね。私が医師になりたてのころとはガラッと変わってしまいました。私のクリニックにも20代の方が狭心症で運ばれてくることもあります。中学生で狭心症になった例もあります。

研究会:そんなに若い方が? その患者さんは太っているのですか?

桜田:それがそうではないのです。昔は太っていて脂ぎった人が狭心症になるというイメージがありましたが、最近問題になっているのは、見た目で判断できないケースが増えていることなのです。若く、筋肉質で、健康そのものと見えるアスリートが、ある日突然心臓発作を起こしてしまうのです。

若いアスリートをも襲う心臓病

桜田:最近も有名なサッカー選手や世界的に有名な水泳選手が心臓病で突然亡くなりましたね。うちのクリニックでも30代で日頃からスポーツを行っている男性が、胸が痛いということで来られました。見た目は健康そのものでしたが調べると冠動脈が閉塞しており心筋梗塞の状態でした。心筋梗塞に至ってなくても血管内皮機能が非常に悪く、冠動脈が痙攣して非常に細くなっている方もいます。

研究会:見た目と血管の健康度は比例しないということですね。

桜田:現代では10代から90代まで、狭心症や心筋梗塞はあらゆる世代で起こりうる病気なのです。また見た目の体型で先入観を持つと他の病気と間違えて、心臓病の進行を見逃してしまう恐れがあります。

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