その食生活が心臓病への第一歩?

その食生活が心臓病への第一歩?

心臓病が増えている原因は?

心臓病が若い人に増えた理由

研究会:若い人に増えた原因は何なのでしょう。

桜田:食生活やストレス、運動不足などの影響が大きいと言われています。しかし最近トップアスリートやスポーツの指導者が心臓病になっている現状を見ると、運動不足というだけでは説明できません。

研究会:ということは食生活でしょうか。

桜田:それは大きいと思います。いくら運動をしても、乱れた食生活が習慣化すると動脈硬化になって、やがて狭心症や心筋梗塞になる危険が増していくと考えています。

研究会:乱れた食生活はなぜいけないのでしょうか。

桜田:そういう食事は一般的に、濃い味付け、高脂肪、高カロリーのものが多いですね。脂肪、塩分、糖分、そして酸化した油をとりすぎることがよくないのです。たとえば当院の看護師さんたちも一見元気なのですが、血管の状態を測ってみると内皮機能が低下していたり、酸化ストレスが高い状態の人が多かったのです。そこで食事内容を聞いてみると、みんな忙しいので不規則になりがちで、深夜の勤務時間にお菓子などの間食を摂っているようです。

3歳の味覚が一生の食生活を左右する

研究会:具体的な数字を示されると改めて驚きます。

3歳の味覚が一生の食生活を左右する

桜田:そういう食生活を今の子供は3~4歳ごろからとっています。高脂肪、高カロリーのファーストフード、糖分・果糖の多い清涼飲料水の味を小さい時に覚えてしまいます。その子にとってはそれが味覚の基準になると言われています。また小学生の有名な塾の周りにはファーストフード店舗がたくさんあって、塾への配達まであると聞いたこともあります。揚げ物など油を多く使用した食品には終末糖化産物と訳されているAGEという老化を促進する物質が多く含まれていたり、ペットボトルの飲み物には驚くほど糖分の多く含まれたものがあり、知らないうちに高血糖にさらされることになり、血管の内皮機能がダメージを受けます。

研究会:小さいうちから心臓病になりやすい食事が始まっているわけですね。でも日本人は世界一の長寿と言われていますよね。

桜田:これからもそうなるかどうかは断言できません。欧米型の食生活で育った若い人たちが長生きできるかどうか、不安視されています。しかし「寿命」ということには色々な要素がからんできますし、調査のしかたによって異なった結果が出ることもあります。でも日本の伝統的な食習慣が良かったのは確かだと思いますね。

研究会:欧米型の食事がいけないのであれば日本の伝統食を食べてきたお年寄りには心臓疾患は少ないのではないのでしょうか?

桜田:日本の高齢者には心臓疾患はそれほど多くなかったのですが、実は最近になってこれまで心臓疾患とは無縁だったお年寄りが、ある日突然狭心症になるというケースも増えてきています。

血管の老化を早める食習慣

研究会:それはどういうことでしょう?

桜田:お年寄りの食習慣も激変しているのです。核家族、小家族という生活単位の変化が大きいですね。たとえばマーガリンを一箱買ってきたとしましょう。昔のように7~8人の大家族で暮らしていたら、2週間ぐらいでなくなるでしょうが、少人数なら2か月以上残っているかもしれません。その間にマーガリンの空気に触れている部分はどんどん酸化がすすみます。こうしたものが血管の老化を進めると考えられています。

研究会:酸化した油なども問題なのですね。それなら、一度にたくさん作って小分けして、冷凍しておくというのはどうでしょう。1回分ずつ電子レンジで解凍するとか・・・

桜田:熱を加えるたびに酸化は進むのです。毎食それを繰り返していたら長い年月の間に悪影響が出ると思います。ひとつひとつの真相は証明できませんが、できるだけ悪い要素は排除したほうがいいでしょう。毎回食べきれる量を調理して、温かいうちに食べきる、というのが理想ですね。
ただし、医学も進歩していますから、良いとされていたことが実は体には悪かったとかいうことがあり、研究結果で常識が変わってしまうのはよくあることで 今の常識も将来はどうなるかわかりませんよ(笑)。しかし現代の食生活が過食であり、酸化された油をとりすぎていることは間違いないと思います。肉を過剰に食べ過ぎない、緑黄色野菜や魚をしっかり食べるという「常識」は間違いないと思われます。

血管の老化を早める食習慣

研究会:タバコはどうですか?

桜田:タバコは絶対にやめるべきです。タバコの煙に含まれる成分によって冠動脈が収縮し、血管機能が悪くなることが多くの研究で報告されています。吸い続けることで狭心症や心筋梗塞のリスクが高くなります。また自分は吸わなくても家族や同僚が室内で吸っているだけでもかなり悪影響がありますから禁煙に協力してもらうことが大事です。

研究会:血圧はどうですか?

桜田:血圧が高いのも、たしかに良くないのですが、タバコや高コレステロール食に比べれば狭心症においては影響が少ないという感じがしています。みなさんが血圧に対して意識が高く、血圧計が一般家庭にも普及し、数値が自分で確認できるため異常があれば早めに対処しておられるということも理由です。

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